半ちゃんらーめん さぶちゃん@神保町
そのとき私は、いつものように「さぶちゃん」のカウンターで
半ちゃんらーめんが出来上がるのを待っていた。
店主のさぶちゃんは、いつものようにくわえ煙草で
ちゃっちゃっと中華鍋を振り、ちゃーはんを作る。
煙草の先の灰は、落ちそうで落ちない。
いつも、あれが不思議でならなかった。
あれ大丈夫か?もうやばいんじゃないの?
そう思っていると、いつもぎりぎりのところで
さぶちゃんは鍋振りをやめ、ちゃーはんを皿に盛ったのち
煙草の灰を灰皿に落とす。
今日もいつものように、煙草の先の灰は落ちる寸前
でも、そこから先が、いつもと違っていた。
落ちそうで落ちないはずの、煙草の先の灰が
ポロッと取れて、鍋に落ちた。
さぶちゃんの鍋振りが、止まった。
鍋の中の灰をじっと見つめ、
それからカウンターの客を、ゆっくりと見渡す。
さぶちゃんは、静かにこう言った。
「申し訳ありませんが、本日はお帰りください」
そしてさぶちゃんは、暖簾をしまった。
次の日も、暖簾はしまわれたままだった。
次の日も、その次の日も
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